記憶のかけら②

物語

さまざまな疑問を残しながら、毎日がただ過ぎていく。
こんな状態のまま幾日が経過しただろう。

ぼくの覚えているママは、少し太っちょで、二の腕がめっちゃ気持ちよくて、明るくて朗らかで、何でも楽しいことに変えてしまうような力を持っている人。怒った時はちょっと怖いけど、基本とても優しいママなんだ。

現在のママは、スマートで二の腕が全然タプンタプンしていない。美しい系のママである。このママの性格は、本当に記憶のママにそっくりだから、不満も特にない。

パパもそうだ。記憶のパパは痩せているけど、このパパは太っているのと髪の毛が少し薄いということだけで、他は変わらない。

弟の聖斗、妹の舞美も少し見た目が違うだけで、他は何にも変わらない。

結局、みんな容姿は違えど、内面的な部分が変わっていないから、これはこれですんなり受け入れられているのかもしれない。
ぼくは、考えても何も答えらしきものにたどり着かないから、なんとなくこの生活も悪くないと思い始めている。

この現状をどうにかしないとという想いと、このままでも特段問題ないという相反する気持ちが交互にぼくの心に現れる。

ココは時折、ぼくに何か言いたそうに、ジッとぼくの顔を見つめる時がある。
そのたびに、ぼくはココを引き寄せ話しかけるのだが、ココは見つめるだけで何も言わない。

「ココ、ぼくはどうしたらいいんだろう。」
「このままこの生活でいいのかな。」
「ぼくの記憶がおかしくなっているだけなのかな。」

ココは颯斗のそんな言葉を聞きながら、慰めるようにペロペロと颯斗の顔を舐めた。

そんな毎日を過ごしながら、やっぱり一度ママにこの現象を打ち明けてみることを考えた。でも、何をどう話せばこの現象を理解してくれるか。そもそもぼくは目覚めた時、なぜ泣いていたのだろう。やっぱり、どこかおかしい。何がおかしいのかパズルのピースがはまりそうではまらない、そんな感覚にどこか似ている。
でももし、ママに話して、そのママがとてつもなく何か企んでいる悪い人だったら、ぼくの身に危険が及んだりするのかな。いや、この数か月で、ママや他の家族は悪い人ではなさそうなことは理解しているつもりだ。
ぼくだけではわからない何かが、ママに言うことによって解決に導くヒントに出会える確率の方が高い気がする。
よし!やっぱりママに言ってみよう。

その横で、ココが少し微笑んだ気がした。